小説

笑顔を見せて 続
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「お邪魔しまーす」
「んーちょっと汚いけどまぁ気にしないでそこらへん座ってて。」
「はい!お言葉に甘えて!」

・・・まさか本当に泊まる事になるとは。
事態に驚いているのは笹塚の方だった。
食事の帰り際、突然パッと出てしまった自分の言葉に、彼女は少し躊躇いつつも、承諾してくれた。
31のおじさんから、「泊まる?」と言われ簡単にイエスと答えてしまう16歳のこの子には、呆れというか流石という感情が芽生えてくる。
お菓子でも持ってくる、と弥子に告げ、台所へと一人佇む笹塚は、自己嫌悪しつつも、少しテンションが上がっているという事実に戸惑いを隠せない。

「何やってんだろ俺・・・」

ただ、あの子を一人にさせたくないと思ったから。
俺の目の前であんな顔されたらたまらなくなるって・・・・。
いや、でも・・・一警察として、高校生の女の子一人で家に居させるワケにはいかない。
そうだろ笹塚衛士。

・・・そう自分に言い聞かせるだけで精一杯で、それすら自分は何をやっているんだろうという途方にくれた思いで胸が一杯になった。
でも今日はこの子を絶対に帰したくないと思ったのは事実で・・・

「ゴメン・・・酒のつまみしかなかった。」
「わあ!サラミ!美味しいですよねコレ、お酒によく・・・」
「・・・・飲んでんの?」

ガシャリ、と胸ポケットから手錠を引っ張り出し、弥子に見せ付ける。

「う・・・嘘ですってば!いやぁ、流石刑事さん、いつでも手錠を持っていらっしゃるんですねハハハ・・・」

・・・飲んでるんだな、と笹塚は確信めいた苦笑いを浮かべ、クスリ、と笑う。
全く、この子は。

「あ・・・笑った。」
「・・・え?」
「今笹塚さん笑いましたよね?」
「・・・・ああ・・・」
「笹塚さんの笑顔、初めて見ました。」
「・・・そう?」
「今まで一度も見せたことなかったじゃないですか!ホラ、もっと笑ってください!」
「まいったな・・・」

ああ・・・引きずり込まれる。この子のテリトリーへと。
違う・・・今日は。今日は俺の所へと来て欲しい。愛しく照り映える君を。

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