捧げもの

伝わる、伝える。
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四天宝寺中学校放課後。

3年8組の教室。

部活のない子たちは皆順に下校している。

越野よもぎはこのクラスに居る一氏ユウジを尋ねにきていた。
「ユウジ今日一緒に帰れる?」
「ええどー。あ、小春!ほな後でな」


一氏は一言交わした後、相方である小春を見つけ飛んでいってしまった。

その様子を見つめ、越野ははぁ、と小さくため息をついた。

越野と一氏は学年は違うが

幼馴染であり小さいころからずっと一緒に過ごしてきた。

初めは気付かなかったが

互いに惹かれあっていることに気づき、

付き合うことになったのだ。

だが、越野には不安があった。

付き合う前から小春のことを溺愛しているのは知っているが、

付き合ってからも相も変わらず一氏は小春にイチャつきに行くのだ。

しかも、告白以来、自分には好きなんて甘い言葉は吐かないくせに

小春には毎日大好きだの愛してるだの...呆れを通り越すレベルだ。



「私、ほんとに愛されてんのかな、」

不安で気が気じゃなかった越野は部活を見て待つことにした。



テニスコートに目を遣れば、

二人がお笑いテニスをして、謙也と財前のダブルスと対戦していた。

「なんでやねん!それ総理!」

ユウジのキレのいいツッコミに思わず笑みが零れる。

(いい顔してるなぁ。)

楽しそうな顔をしている恋人を見て、少し悩んでいる自分が馬鹿らしくなってきた。

そう思いながら見つめていると、

「あ、よもぎちゃんやんか。どないしたん?...あぁ、ユウジか。」

部長の白石が話し掛けてきた。

「あ、うん。一緒に帰る約束なんで待ってるんです。」

「あいつと付き合うと大変やろ、あいつ恋人できてもあの調子やから」

そういって白石の指差す先にはイチャイチャする二人の姿。

「ああ、分かってます。だけど仕方ないことだから」

一瞬複雑そうな表情をしたが諦めた様に笑う。

そんな越野の様子を見た白石は何を思ったのかそっと抱き寄せ、

「俺やったらめっちゃくちゃ甘やかして愛したるのになぁ。」

と耳元に囁いた。



すると、テニスコートからものすごい形相をした緑頭が

スピードスターをも超える勢いでこちらにもう突進してきた。

そして越野を引き寄せ白石からひっぺがすと、

「何さらしとんじゃボケ!アホか!俺の女じゃ触んな!ハゲ!」

と、怒鳴った。

周りもビックリして固まる中、

「おい、帰るど。」

と越野の腕を引っ張りコートを後にした。



「ちょ、痛い!痛いって!ユウジ!」

一氏が強く握り締めすぎたせいか、越野の手首は赤くなっている。

さすがにやってしまったと一氏は少し握る強さを弱めた。

「お前が悪い。」

「は、え、なんで。」

「お前は俺のやろ」

一氏から聞いたこともないような独占欲のある言葉に

越野は内心はとても嬉しかったが、言うなら今だと悩んでいたことを打ち明けた。

「ユウジだってずっと小春さんとイチャイチャしてるじゃん。

小春さんには愛してるとか言うのに私にはなんもなくて、

でも仕方ないって諦めてたら白石さんが心配してくれたの、白石さん悪くないよ」

「俺がお前にそうゆうこと言わんかったんは、は、恥ずかしかったからや!

こんなん初めてやからどないしたらええかわからんくて...ほんで!

...せやけど、白石に抱き締められとるとこ見てごっつ腹立った、」

恥ずかしそうに頬掻きながらそう告げると、

越野はちゃんと想ってくれていたんだ、と力が抜けた。

「大丈夫か!?」

急いで支える一氏に越野は思いっきり抱き着いた。

「照れ屋のユウジ!」

「うっさいわ!!っちゅーか次白石と浮気しとったらどつくど!」

「しないよ!ユウジ大好き!小春さんに負けないよーっ!」

「お、俺も好きじゃ、アホ!」

そういって軽く口付け、照れくさそうにでも幸せそうに手を繋いだ。









―その後残されたテニス部は、



「やれやれ、仕方ないやつらやな。」

「ユウくん素直やないんやからっ♡」

「ユウジ先輩ベタ惚れ過ぎでキショいっすわ」

「あいつ俺より速かったで!?なぁ!なあ!!スピードスターのが上っちゅー話や!うわああ!」

「これにて一件落着ばいね。」






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